「そんな顔するなって。俺も似たようなもんだったし」

「本当に人のこと言えないじゃん」

「ところが今は言えるんだな、これが。二年まではそんなに成績がよくなかったけど、走らなくなったら時間持て余してさ。バイトと勉強の日々よ」

「ふぅん……」

「真ん中より結構下だったけど、今は学年で百位以内には入ってる」


すごいじゃん、と心の中で呟く。


うちの学校は、たぶん生徒数が多い。
一クラスは約四十人、一学年ではだいたい三百人弱になる。


真ん中より結構下だった成績が百位以内になったということは、二百位以下くらいから百番くらいは上がったということ。
勉強をそっちのけで来た私には、百位以内なんてまだまだ遠い。


「部活一色だった時は、帰ったら寝るだけで課題もしてなかったんだけどな」

「課題もしてなかった人がよくそこまで成績上がったね」

「親が家庭教師つけてくれたんだ。俺、塾とか予備校とか行っても、たぶんついていけないからさ。かと言って、オンライン授業も集中できなさそうだったし……」


それはわかる。
私は、勉強でありがちな『どこがわからないかわからない』状態も珍しくない。


きっと、塾や予備校に行っても、授業についていけないだろう。
そういう人間にとっては、家庭教師の方が向いているのかもしれない。