「そもそも、悪いのは美波に進路のことを隠してた俺の方だから……」

「それはっ……! 先輩は……私のことを考えて……」

「うん、確かに最初はそのつもりだった。でも……途中からは怖かったのもあると思う」

「怖かった……?」

「うん。美波が離れていくんじゃないかって……」

「え……?」


予想外の言葉に、目を真ん丸にしてしまう。
輝先輩は自嘲交じりに微笑し、息を深く吐いた。


「俺が進路のことを話してなかったこともだけど、それだけじゃなくてさ……」


彼は言いにくそうにしながらも、必死に言葉を探しているようだった。


「美波と俺が知り合った時、美波は俺と自分が似たような境遇だったから心を開いてくれただろ?」

「それは……そうかもしれない、けど……」


否定はできなかった。
だって、たぶんその通りだったから。


「仲良くなれたのも、似たような経験をしてるっていうのが大きかったと思うんだ」

「うん……」


あの頃の私は、なにもかもがつらくて……。体は生きているのに、心はずっと事故に遭った一年前で止まったままだった。
全部がどうでもよくて、絶望感でいっぱいだった。


そんな中、声をかけてくれたのが同じような経験をした輝先輩だったからこそ、きっと彼との距離が縮まっていったのだ。
タイミングが違ったり、他の人だったりしたら……。こんな風に付き合うことはなかったと思う。