プールから離れた私は、必死に歩を進めていた。


走ることもできない左足が憎い。
その上、筋トレや走り込みでつけた体力はこの半年ですっかり衰え、早歩きをするだけでも呼吸が乱れる。


はぁはぁと肩でする息は、ひどく耳障りだった。
じっとりと纏わりつく蒸し暑さに嫌悪感が募り、五感のすべてが行き場のない怒りや焦燥を感じ、それを持て余していた。


誰かに怒りをぶつけることも、なにかを恨むことも、できない。
現状を受け止めるしかないとわかっているのに、頭では理解していても心は未だに追いつく気配がないままで、まるでどこかを彷徨っているようだった。


「……っ、ふっ……」


こらえていた嗚咽が漏れ、とうとう涙が零れ落ちた。


せめて学校を出るまで我慢するつもりだった。
それなのに、私の意思に反して生ぬるい雫が頬を伝って流れていく。


生徒たちがまだ多く残っている校内では、きっと注目を浴びてしまう。
もう早歩きをする気力は残っていなかったけれど、鈍い痛みを抱える左足を引きずるようにして人目のない場所を探し求め、人がいない方へと足を向けた。


直後、ドンッと肩がぶつかり、バランスを崩した体がよろめく。
反射的に顔を上げれば、ひまわりのように明るい金髪が視界に入ってきた。