十二月に入ると、寒さが一段と厳しくなった。


共通テストまで一ヶ月を切った三年生の中には、ピリピリしている人もいる。
反して、推薦で進学先や就職先が決まった生徒たちは、気楽そうに過ごしているように見えた。


輝先輩も共通テストに向けて頑張っている。
成績も上がっているようで、模試の結果もすべてB判定だったのだとか。


彼は、『A判定なら言うことないんだけどな』と苦笑しつつも、確実に伸びた成績のおかげで少しだけ安堵感が芽生えたみたいだった。


終業式だった今日の放課後は、輝先輩と一緒に過ごす約束をしている。
家庭教師が休みになったらしく、昨日の朝に彼から誘ってくれた。


学校では毎日顔は見ているけれど、一緒に帰る時以外で放課後に会うのは久しぶりで、昨夜からずっと楽しみだった。


彼のおかげで、学校に来るのが億劫じゃなくなった。
あんなにも憂鬱だった学校生活が、今では普通に楽しめている。


もちろん、水泳部の話題が出ればまだ胸の奥はひどく痛むし、自分の気持ちにも折り合いがついていないけれど……。ただ、輝先輩に会えると思うと、学校にいるのも前ほど息苦しくない。


彼に会えるという幸せが、私の心を支えてくれていた。