唇を噛みしめていなければ、涙が浮かんでしまいそうだった。


少し前の私は、いつも部員たちの前を泳いでいた。
ライバルたちの存在に刺激され、自分の目標を達成するためにはもちろん、周囲の目標であり続けるためにもよりいっそう練習に力が入り、夢に向かって歩んでいた。


それなのに、今はみんなの前を泳ぐことはおろか、同じフィールドに立つとことすらできない。
あの場所には、もう決して戻れないのだ。


夢が破れる可能性を考えたことはあっても、こんな未来を想像したことなんて一度だってなかった。


だけど、私の左足は、もうあの頃のように動いてはくれない。
泳ぐことはできても、選手として輝く未来は決してない。


「私、牧野先輩の代わりになれるように頑張ります!」

「……っ!」


そんな現実を改めて突きつけられたことに絶望していた時、未恵の言葉によって心を貫かれ、どん底に突き落とされた――。