「ブランコとか久しぶりに乗ったな」

「小学生の時とか、靴飛ばししなかった?」

「やったやった。駄菓子とか賭けて、俺はだいたい一位か二位だった」


そう言うと、彼が立ち漕ぎを始めた。
浴衣を着ている私は、同じようにしたくなったけれど我慢する。


輝先輩のブランコがどんどん大きく揺れるのを見て、思わず笑みを零していた。


「靴飛ばしやってよ」

「いいけど、なんか賭ける?」

「私は下駄だからできなよ」

「じゃあ、あの滑り台を超えたらなんか一個言うこと聞いてもらおうかな」

「えっ? うーん……じゃあ、おいしい棒でいい?」

「十円かよ!」


有名なスナック菓子を景品候補にすると、彼がケラケラと笑った。
その間にもブランコはさらに大きく揺れ、半円を描こうとする。


間もなくして輝先輩が右足の靴を飛ばすと、スニーカーは宙を舞った。


「あっ」


ふたりの声が重なる。
白いスニーカーは放物線を作るように飛び、三メートルほど離れた滑り台を見事に超えた。


「本当に上手いじゃん」

「だから言っただろ」

「おいしい棒、明太子味をプレゼントしまーす」

「十円って、小学生レベルだからな」