「……で、絶対に無理だったりする?」

「無理……」

「……うん、そっか。わかっ――」

「じゃない、と思う」


今度は輝先輩の目が真ん丸になる。
真っ直ぐに向けられた瞳が、私の真意を測るようだった。


「無理じゃない」

「マジで?」

「っていうか、私も同じ気持ち、だと思う……」


丸くなっていた目がもっと大きく見開かれ、ポカンとした顔で私を見ている。


「気づいたの……今だけど……」


ぽつりと零せば、彼が今日一番驚いたような表情をしたあとでブッと噴き出した。


「うそだろ?」

「うそじゃない……」

「マジで?」


眉を寄せて笑う顔に、なんだかムッとしてしまう。


「先輩、しつこい」

「いや、そう言われても。俺だって、さっきの美波みたいに信じられないんだよ」

「……この状況でうそなんて言わないし!」


もうヤケだった。


恥ずかしさと、緊張と、ドキドキと。
全部が合わさって、頭も心もグルグルして、平静ではいられなくて。だからもう、繕う余裕もないままに言葉を返すしかなかった。