昔、厩舎には専属の厩務員がいたらしい。だけど、現在はいないのだとか。公爵本人の愛馬は軍馬で、その管理はもう一人の執事であるイーサン・グッドフェローが行っているらしい。というわけで、現在馬の管理はイーサンとロバートがほかの業務と兼任している。

 それはともかく、図書館に馬車で出勤するなどととんでもない。

 わたしが姉の後釜としてウインズレット公爵に嫁いだことは、図書館の人たちに告げていない。それなのに、ウィンズレット公爵家の鷲の紋章の刻印された立派な馬車で出勤すれば、噂されるにきまっている。

 そのことを何度も訴え、ようやくモーリスに納得してもらった。

 いずれにせよ、図書館に真面目に出勤するよりもそのふりをして出勤しない方が多くなる。馬車はぜったいにやめて欲しかった。

 それはともかく、いまこのときほど自分にスキルがあってよかったと感じたことはない。