気がついたら、彼の唇がわたしのそれから離れていた。

 だけど、まだ彼に抱かれたままでいる。

 大きな彼がわたしを抱く姿は、大小の差がありすぎて滑稽に見えるに違いない。

 明け方でよかった。つくづくそう思う。だれかに見られでもすれば、わたしはともかく公爵は恥ずかしいでしょうから。

 しらじらと夜が明けつつある。早朝の独特のにおい、それから肌に突き刺さるような鋭い寒気。

 火照った体には、どちらも気持ちがいい。

 会話はない。いまは、それがかえってありがたい。

 昨日から今朝にかけていろいろなことがありすぎた。正直、心も体もついていけていない。