今夜、というよりかはこの早朝も、昔と同じように石畳や石段やベンチの上で眠っている人がいる。

 いずれも慈善団体が配給した毛布をかぶって眠っている。

 そんな彼らの鼻先をかすめるようにして足早に歩いているけれど、だれ一人としてこちらを見たり気にかけたりする人はいない。

 こういう界隈ですごす彼らもまた、何事も見ぬふりきかぬふり知らぬふりをすることでトラブルに巻き込まれずにすんでいる。