もしかしたら、彼は主寝室に入った途端に寝台に倒れ込み、そのまま眠ってしまったのかもしれない。

 だったら、いましかないわよね。


 メイドのジリアンがカーテンを閉め、寝台の上に夜着を準備してくれている。

 テラスへと続くガラス扉へ近づくと、カーテンを開けた。

 まぶしいまでの月光が射し込んでくる。

 寝台の上の夜着は姉の遺したものではなく、わたしが持って来たボロボロの夜着である。

 ジリアンは、そんなわたしの汚い夜着をちゃんと洗濯してくれたのだ。

 よくよく考えたら、それも迷惑な話よね。