公爵をそっと盗み見た。すると、彼もこちらを見ている。

 慌てて視線をそらしてしまった。

 自分の顔は、信じられないほど火照っているのを感じる。

 馬車内に灯火はなく、馭者台にランプをぶら下げている。公爵のうしろにある小さな窓から、その淡く小さな灯りが見えるけれど、馬車内の様子を照らすにはいたらない。

 いま、わたしの顔が真っ赤になっていることがバレずにすむ。

 心からホッとした。