「お待ちください」

 目にもとまらぬ速さ、とはこのことね。

 気がついたときには、イーサンに通せんぼされていた。

 彼は、今朝も可愛らしすぎるわよね。

 彼は、昨夜同様将校服姿である。

「ミユ様、お待ちしておりました」
「『お待ちして』って、なにか約束をしていたかしら?」
「閣下より馬車内にてお待ちいただくようにとおおせつかっております」
「なんですって?」

 わけがわからない。おもわず、おもいっきり叫んでした。その声は、みっともないほどひっくり返っていた。