断りたい。畏れ多すぎる。
 公爵の顔をそっと見上げた。銀仮面の下にある蒼色の瞳がやさしくこちらを見おろしている。

 こんなの、断れないわ。

 断わる理由がないからだけれども、正直ちょっとだけうれしいという気持ちもある。

 公爵はどういうつもりかはわからないけれど、その気遣いがうれしかった。

 だから、素直に彼が運んで来てくれた椅子に腰かけた。

 彼の上着にシワをつけてはいけないので、背中がそれに触れないよう背筋を伸ばし続けた。

 三人でサンドイッチを食べ、ミルクティーを飲んだ。

 しかし、内心では味わうどころではなかった。

 緊張と不安でいっぱいすぎて、それどころではなかったのである。