彼女は、サンドイッチが好きではなかった。とくにパンとトマトの組み合わせが嫌いで、トマトとベーコンの組み合わせはもっと嫌いだった。

 彼女は、ミルクが大嫌いだった。牛でも山羊でも。そのミルクを紅茶に入れるなど、彼女にすれば神をも畏れぬ所業だったに違いない。それほど忌み嫌っていた。

「ミユ様、ミユ様?」

 姉のことを考えていて、イーサンの童顔がこちらをのぞきこんでいることに気がつかなかった。

「ミユ様も作ってくれたのですよね?」
「え、ええ、ええ。お手伝い程度だけど」
「すごく美味そうです。料理長が作っているところを想像するより、ミユ様が作ってくれているところを想像する方がずっとずっと美味しく感じられるはずです」
「あ、ありがとう。お世辞でもうれしいわ」

 イーサンと話をしている間に、公爵がティーカップにミルクたっぷりのミルクティーを注いでくれていた。

 三杯分を、である。