ハニーシガレット ~バレンタイン番外編~

「そんな喜んでくれるなら、らしくないついでに言うけど、諦めないでくれてありがとな」

「⋯っ」

「諦めないで、呆れないで、好きになってくれて好きでい続けてくれてありがとう」


琥珀色の瞳が真っ直ぐにあたしを見つめて、その綺麗な虹彩には間抜けな自分が映った。

その顔は今にも泣きそうで。


「ホワイトデーのお礼にはまだ早いよ」

「チョコ、ありがとう。美味い」

「来年も受け取ってくれる?」


一目惚れをして、何回も告白をして。振られて、懸命にバレンタインデーのチョコを渡した数年前では夢のまた夢だった薫くんの彼女という立場。

30回目の告白で付き合えた時ですら、こんな未来は想像さえしていなかった。


喧嘩したり、すれ違ったり、一度は離れ離れになったり、本当に色々あったけれど今、こうして薫くんの隣にいられる事。本当に本当に想像すらしていなくて、夢だった。

でも今、それは現実となっている。


色々あったけどこうして薫くんと今も一緒にいて、今年もチョコを渡せた。


“来年も”という言葉に「気早すぎ」と笑いながらも頷いてくれた薫くんに伝えたい。


こちらこそ、ありがとうって。

呆れないでいてくれて、好きになってくれて、好きでいてくれてありがとうって。


そしてこれからも好きでいてねって。


「大好きだよ、薫くん」


甘くてほろ苦いバレンタインデーも悪くないし、とびきり甘いバレンタインデーはとびきり幸せに溢れている。

数年前のバレンタインデーを思い出しながら変わらずに大好きな人と過ごした何度目かのバレンタインデーだった。




~おわり~