ハニーシガレット ~バレンタイン番外編~

「でも、好きなんです。心がきゅーって引き寄せられるっていうか、本当に本当に大好きで⋯、」


返事が来なかったという事はあたしからのチョコなんて先輩は望んでいない。

むしろ迷惑なんだろう。

だけど、こんなにも人を好きになったのは初めてで。

あたしはまだ先輩の一部だって知れてないのかもしれないけどこの先もっと先輩のこと、知りたいって思う。

願わくば隣で先輩と過ごしていきたいって。


向けられた言葉がどれだけ素っ気ないものだとしても、それすらも抱きしめて大切にしたいと思ってしまいくらい、好きなんだ。


「大好きです、薫先輩」


29回目の告白は、いつもと同じ返事だった。


「悪いけど、無理」


だけどこの時先輩は「でも」と言葉を続けて、普段では考えられない様な甘い言葉をくれたんだ。


「ありがとう」って。


そう言って、震える手で差し出したチョコを受け取ってくれた。

振られてしまったけど、まさかありがとうなんて言われるとは思ってなかったし受け取ってくれるなんて想像すらしていなかった。それにバレンタインデーに会えた。


数年前のこの日はバレンタインデーらしい、ほろ苦さと甘さを含んだ一日だった。