ハニーシガレット ～バレンタイン番外編～

「用、あります」

「なに？」

「何って⋯分かんないですか？」


急にモジモジとしだすあたし、我ながらキモいなと思う。でもやっぱ、あたしだって恋する乙女だ。好きな人の前では可愛子ぶってもいいじゃないか。


「今日、バレンタインデーなんです」

「うん」

「チョコ、受け取ってくれますか？」


そっとカバンからチョコレートを取り出して差し出す。

ブラウンとゴールドで彩られた箱には有名なブランドのロゴが刻まれているあたしにとったら背伸びしたチョコだ。


「先輩、甘いの苦手かなって⋯だからビター味のチョコ選びました」

「⋯⋯」

「何回目だって、しつこいってウザがられてるのは分かってるんですけど、やっぱり、本当に先輩のことが好きで⋯、」

「⋯⋯」

「大好きで、こんな面倒な後輩にもたまーに優しくしてくれる所も好きで」

「たまになんだ？」

「いつも優しいって訳じゃないじゃないですか」


試すみたいに片眉を上げた先輩にそう言えばハッと微かに笑った薫先輩。