麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集

その6
多美代



このおけいが、こんなにも我を失って激高するなんてな

まあ、退院して、自分を取り巻く状況が一変したのは応えたと思う

みんなとは、ただ”フツー”にやっていきたいだけなんだろうにな、コイツ…

ところが、周りの奴らは高原先輩や紅丸先輩と近しい仲というところだけで、ズケズケと無神経に接してきてるはずだ

そいつらには言ってやりたいよ

横田競子の本当のところ、知ってんのかって

コイツはなあ、目の前の損得なんかで動いてねーっての!

心のもとない先入観で、こんなピュアな奴をイジリまくりやがって…


...



まあ、ここで熱くなったも仕方ないか…

よし…、おけいとは二人で腹を割って話しをしよう

「テツヤ、つい興奮しちゃってさ、すまない。おけいとは二人で話しさしてくれないかな?今日中にさ、うちらどっちかが連絡すから」

テツヤは両手を頭の後ろに組んで、「うん、了解!」と歯切れよく答えてくれたよ

「おけい、お前もいいな?」

「ああ…」

おけいの方は、やや歯切れが悪かったなかな…(苦笑)


...



「駅まで歩きながら話さないか?」

テツヤが一旦、釣り堀内に入っていったところで、おけいにそう言った

おけいの返事は、やっぱり「ああ…」だったわ

「…まずは南玉の総集会のこと話すよ。お前は聞きたくなんかないだろうが、こっちからすれば、”今”のおけいには耳に入れない訳にはいかないんだ…」

私は、総集会で”起こったこと”を、大まかに告げた

その”報告”の中心人物は、必然的に本郷麻衣に行き着いた

おけいは静かに聞いていたよ

川沿いの土手道をゆっくり歩きながら、私は続けた

「それで、矢吹先輩のさっきの話だけど…。先輩はよう、テツヤとお前の二人の仲、心から応援してるよ。そして心配してる…。とてもな」

「どういう意味だよ、それって?」

「いいか…。テツヤを取り巻いてる女連中、テンバってるらしいぞ。言うまでもなく、テツヤがお前一人に目を向けてるから、まあ、ジェラシーってヤツだろ。そいつらからしたら、みんなの共有物みたいなもんだったテツヤをさ、お前が独占したことになるんだ」

「わかってるさ。テツヤと付き合っていく限り、こういう状況になるのは承知していたし…」

おけいは動じてなかった


...



「だがよ…、テツヤには、連中から相当プレッシャーがかかってるらしいんだ。私から言わせりゃ、嫌がらせだけどな。泣き崩れる奴からヒス起こす奴、中には脅迫まがいな態度に出る奴とか…。テツヤはそれ、みんな突っぱねてるんだってさ。でもアイツ、苦しんでるよ。それでも、お前とは一歩一歩、一緒にって、真剣に考えてるさ。そんなテツヤのこと、矢吹先輩は全部知ってる」

「…」

「それで、矢吹先輩は危惧を抱いてるんだ。テツヤの周りの女ども、テツヤより、むしろお前に牙を剥くんじゃないかってな」

ここまで話すと、おけいは立ち止まった

「多美、そういうのも覚悟はできてるよ。私は逃げも隠れもしないさ。そんで、テツヤとはしっかり寄り添って歩んで行く」

うん、さすがだ

ちょっと悲壮感もなくはないが…

おけいは闘志満々でそう言い切ったよ