……これは、きっと上辺の言葉にすぎない。そうわかっているのに、魅力的だなんていうのも初めて言われたから胸がくすぐったくなる。

 頬が火照るのを自覚して俯き気味になる私。一方の星羅は、顔を歪めてかなり不服そうにしていた。

 黒凪さんは意味深に口角を上げて問いかける。

「この後、ご家族で出かける予定などありましたか?」

 私も入れて皆で出かけることなど絶対にないとわかっていて、あえて聞いたのだろう。もちろん、叔父は動揺を露わにしつつ首を横に振る。

「い、いえ……」
「では問題ありませんね。これで失礼いたします。行きましょう、深春さん」

 自然に肩を抱く仕草から、女性をエスコートするのにも慣れているのがわかる。私はドキドキしっぱなしだけれど、リードしてもらえる頼もしさに私も気が大きくなっていく。

 自分からもなにか言っておかなければと思い、三人に向かって口を開く。

「食事の用意、できなくてごめんね。いってきます」

 勇気を出したにもかかわらず、口にしたのはたいして威力のない言葉だったが、これまで自分の用事で家事を怠る時はなかった私にとってはすごいこと。

 黒凪さんもそれを察したのか、どこか満足げに微笑んで私を玄関のほうへ促す。

 叔父たちは言葉を失った様子で、ただ呆然と出ていく私たちを目に映していた。