試しに人差し指で彼女の黒いワンピースを(つつ)いてみた。

「っうわ! ふふ、不審者!?」

 実体のある人間だと理解して、俺は大袈裟に飛び退いた。女の子は、あ、と何かを思い出した表情(かお)をする。

「不審者ではありません。私は魔女見習いの三神ジュリ、17歳です。
 今この瞬間からあなたは恋する魔法を請け負う事になりました。ご協力のほど、よろしくお願い致します」

「……いや、ちょっと意味分かんないっす」

 さっきから魔法とか学園とか言ってるけど、ハリーポッターじゃあるまいし……これはアレか? 厨二病。

「とりあえず帰って貰ってもいいですか? ここ俺の部屋(うち)なんで」

「帰る事はできません。課題対象のあなたに恋の魔法をかけるまでは、帰って来るなと言われています。なので強制的に居候させていただきます」

「いや、帰れよ。何が強制的だ」

「課題をやり遂げないと私は進級できません」

「知るかそんなもん、帰れ」

「キラさん、私を救えるのはあなただけなんです。どうかご協力のほど、よろしくお願いします!」