月下の逢瀬

言い置いて、ベンチから駆け出した。
早くここから離れたい。
誰もいない場所で、溢れ出した涙を出し尽くしてしまいたい。


「待てよ、真緒!」


肩を掴まれて、無理矢理振り向かされる。
すでに涙が溢れた顔を見て、理玖の眉間に深いシワが刻まれる。


「真緒、話はまだ」


「もう……、いいよ。
分かった、から。理玖は早く玲奈さんについていてあげてよ」



「まだ話は終わってないだろ?」


「もう十分だから。あたし……今度こそ理玖から離れるから。
玲奈さんのとこに行って。玲奈さんきっと……理玖を待ってる」


「真緒! 聞けよ!」


声を荒げた理玖の顔を見上げた。
涙で汚れたあたしを、理玖は怒ったように見ていて。
その顔に胸が潰れそうになる。


「……もう、十分だってばっ。
これ以上……、これ以上理玖の口から自分の罪を聞きたくない!」


肩に置かれた手を振り払った。

理玖を拒絶したのは、これが初めてだ、と頭のどこかで思った。
焦がれて仕方なかったその手を、自分が払う日が来るなんて、どうして分かっただろう。


「あたしが玲奈さんにできることは、もう理玖に関わらないことだけ! それ以外何もできないっ。

だからもう、あたしに構わないで!」