月下の逢瀬

隠すことなく、むしろ見せるかのようにしていたクラスメイトを思い出す。

あんな子もいるんだし、別に気にするほどでもないよね。


よし、と自分に言い聞かせていると、チャイムが鳴った。
その音に急かされるようにベッドから降りて、衝立の向こうにいる先生に声をかけた。


「あの、お世話になりました。迷惑かけて、すみませんでした」


「はいはい、気をつけて。あ、これ、保健室の利用証明書。担任に提出するように」


衝立の向こうに行くと、本を読んでいた先生が顔を上げて、紙をひらひらと振った。
あたしを見る顔に、特に変わった様子はない。


「はい。じゃあ、失礼しました」


「ん。今日は早く寝ろよ」


見られたのかどうか分からないけど、やっぱり少し気まずい。
紙を受け取ると、急いで保健室を出た。
ドアを閉めて、ほう、と溜め息をつく。


しばらくは、片桐先生を見ると構えちゃうかもなあ。


そんなことを考えていたあたしは、
先生がドア越しにじっとあたしを見つめているなんて、
思ってもいなかった。