月下の逢瀬

玲奈さんは一体どうなっただろう?

廊下から洩れ聞いた話だと、別棟の屋上から落ちたのだというけど。


無事だろうか。
無事でいて下さい。

祈るように願った。



と、人の足音がした。
ばたばたと走る音は、一人。

見回りの先生?
今は気付かないでいて欲しい、そう思いながらも動けずにいた。


ばんっ、と叩きつけるようにしてドアが開いた。
その音に少しびくりとなって、中に入ってきた人の姿を見た。




「椎名…………っ」


「せん、せ……」


張り詰めた顔をした先生は、あたしを見て取って、大きなため息をついた。


「……よかった。いた」


乱れた息のまま、あたしを抱きしめた。


先生のするままに体を預けていたあたしは、何の変哲もない白い天井を見上げていた。
少し色あせたそれが滲む。


もしかしたら。
理玖が来てくれるのではないかと、勝手な期待を抱いていた。

自分がしたことの愚かさも、
招いてしまったことの重大さも、
理解してる。

理玖が来れるはずがない。
玲奈さんのところにいるんだもん。


だけど。