月下の逢瀬

「じゃあここで待ってな。後から迎えに来るから」


「あ! いえ、佐藤先生、タクシー呼んで下さいっ」


慌てて断ったあたしに、片桐先生は首を傾げた。


「俺のことは気にしなくていいよ? もうすぐ帰る予定なんだし」


「いえ、えと、その。病院に寄りますから」


だから、いいです。
重ねて言うと、先生は不思議そうに頷いた。


「わかった。じゃあ、気をつけてな」


「はい、ありがとうございました」


では、失礼しました。と出て行こうとする片桐先生を、佐藤先生が追う。


「あ、私も職員室に行きますわ。タクシーを呼ぶ手配をしますので。
それに、椎名さんの担任に報告もしないといけませんしね。
椎名さん、そこにあなたの荷物を持ってきてもらってますからね。帰り支度をしたら校門前にいなさい」


「はい、すみません」


片桐先生と並んで出ていく背中に、頭を下げた。