月下の逢瀬

「――――という訳で、本年度の現在の進学率は……」


配られたプリントを読み上げる、学年主任の先生の声。

あたしは手にしたプリントに目を通すのを止め、抱えた膝に頭をのせた。


あんなに吐いたのに、まだ気持ち悪い。


どうにかやり過ごそうと文字を追っていたけれど、
この気分の悪さはごまかせなくなってきていた。


結衣の言う通り、早退すればよかった。


はあ、とため息をつくと、背中をそっと撫でる手。


「真緒、キツいんじゃないの? 大丈夫?」


後ろに座っている結衣が、小声で聞く。
その声音にホッとして、振り返ろうとした瞬間、
ぐるりと世界が回った。


前にも覚えがある。

これは、気を失うんだったよね、とちらりと考えた。


近くにいたはずなのに、遠くに結衣の声がして。


視界は真っ暗になって。

ああ、気を失えば、楽になるかも、そう思ったとき。


ふわり、と体が暖かなものに抱えられる感覚があった。


「大丈夫か、椎名」


耳をくすぐる、心地よい低い声。

その安心感に、意識を手放した。