小さなジュエリーボックスの中から出て来たのは、薄い水色の石のピアス。

「タンザナイトでもないし、トルコ石でもないよね?何ていう石?」
「ジルコン」
「ジルコン?」
「ん。よくある12月の誕生石じゃつまらないと思って、探した」
「えっ、そんな貴重なものなの?!」

好きな女にはいつだって特別なものを贈りたい。
誰かと被るようなものじゃなくて、唯一無二のものだからこそ、愛情も輝き続ける。

「着けてやろうか」
「うん」

着けているピアスを外すと、翔は凜の隣に座り、そっとホールにフックを通す。
ジルコンの周りにダイヤが散りばめられたピアスが凜の耳元で優しく揺れた。

「似合う?」
「よく似合ってる」
「可愛いピアス、ありがとっ」
「お礼は?」
「え、……誕生日プレゼントなのに御礼しないとならないの?」
「いいじゃん、特別に」
「何それ」

凜は怪訝な顔つきで翔を見据える。

「じゃあ、いいよ、……別に」

酔って冗談で口走ったことは分かってる。
プロポーズだっていつもおちゃらけてて真剣じゃないし。
だけど、今日は私もかなり酔ってるから……。

「ッ?!………お前、今(何した?)」

残念そうに再び喉を鳴らしながらビールを口にする彼の頬に、触れるだけのキスをした。
私がこんな行動取るなんて予想してなかったようで、珍しく翔の顔が赤い。

「御礼はちゃんとしたからねっ!」

自分からしておいて顔から火が出るってどういうこと?!
翔の顔がまともに見れず、ビールを口にするため視線を逸らした、次の瞬間。

「んッ!?………ちょっ」
「お礼の、お礼?」

翔は無防備な私の首筋にキスをした。
しかも、してやったりといった表情で。