生まれて初めてのキス。
ゆっくりと唇を離した彼は、ちょっぴり照れくさそうにしながら、でも満足そうな表情で私を見つめる。
そんな私は恥ずかしいのに顔を隠す事すら出来ない。
だって、膝上に乗せた手を彼がぎゅっと掴んでいるから。

「やべぇ、凜めっちゃかわいっ」

『かわいい』とか言うキャラじゃないでしょ?
お酒のせいで酔ってておかしくなったの?

「見ないでっ」
「やだね」
「向こう向いてよっ」
「やーだーねー」

絶対顔が真っ赤だよっ。
恥ずかし過ぎて、見られたくないっ。
顔をプイっと横に向けても、長い腕としなやかな体でやすやすと視線の先に現れる。

「もうっ、意地悪すぎるよッ」
「凜限定だよ」
「何それぇ~~っ」
「仕方ねぇなぁ~」
「ッ?!………んっ……ッ」

膝と両手が解放されたと思ったら、両肩を掴まれ押し倒された。
スローモーションのように彼の影が降って来て、再び唇が重なった。

キスの経験値がない私は翔から与えられるもの全てが初めて尽くしで。
頭のてっぺんから甘い痺れのような刺激が体を貫く。

啄められ甘噛みされ、吸い上げられた時には完全に思考が停止した。
だって、今日デビューしたばかりなのに、こんなにも濃厚なキスだなんて無理に決まってる。

だけど、突き飛ばしたいとか離れて欲しいだなんて微塵も思えなくて。
久しぶりに会えた嬉しさも相まって、委ねるがままに与えられる全てを受け入れて……。

「凜っ、少しは抵抗しろよっ」
「………ぇっ?」
「全部奪いたくなるだろっ」
「っ……?!」

翔は余裕のない、そんな表情をしていた。