(高校三年、十二月中旬)

『二十九日に帰国するから』
『帰って来るの?』
『帰って来て欲しくないみたいな言い方だな』
『そういうわけじゃないけど』

夏以降、凜との間になんか溝が出来た。
いつも傍にいないことでの副作用なのかもしれないが、正直不安になる。
もしかして、好きな奴でも出来たんじゃないか?って。

元々、凜から何でも相談するタイプじゃない。
俺が聞くから何でも答えてくれただけで、本当の凛は他人に頼ることも踏み込むこともしない性格。
友達を作るのだって得意じゃないし、俺がいたから何となく同級生の輪に入れたけど。
俺がいなくなった後の凜が正直どんな風に生活しているのかは分からない。
一応、仲のいい連中に凜のことを頼んでおいたが、心配になって来た。

卒業まであと三か月。
凜のことだから、静かに過ごして卒業出来ればいいくらいにしか考えてないはず。
やりたいことを見つけてるなら越したことないけど、果たしてそれをする為の行動力が伴っているのかどうか。
結局、進学するのか就職するのかすら教えてくれず、気づけば凜の誕生日が近づいて来た。

俺らが六歳になる年からずっと一緒に過ごしてきて、凜の十一歳の誕生日の日に初めて彼女にプロポーズした。
と言っても、子供が口にする『将来、お嫁さんになって』という感じだったが。
毎年、年を重ねるごとに彼女への気持ちは膨らむばかりで。
いつしか、本気で彼女との将来を考えている自分がいる。

凜の誕生日は十二月三十日。
だから、何が何でも年末に帰る。
彼女にプロポーズする為に……。