不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








「お父さんはね、私達が前住んでいた地域のクラブを運営していた監督さんとずっと友達でね?よくクラブの子供達と一緒に練習していたのよ」


「そう、だったんだ」


「伊都も小さい頃はみんなで一緒にバスケしてたのよ?」


「私、その辺りの記憶が曖昧で……。写真とかあるかな?」


「……そうね。写真ならそこの棚に置いてあるアルバムに入ってるよ」






ほんの少しだけ覚えていることがある。


休日は家に籠って本ばかり読んでいた私に、お父さんが一緒に連れて行ってくれた広い体育館と、それからキュッキュッと耳を突くようなバッシュの擦れる音。



中学生には見えないような大柄な男の子から、同じ背丈の、同じ歳の男の子もたくさんバスケを習いに来ていて、その中に1人、ポツリと女の私が紛れることが恥ずかしかった記憶。




だけど唯一1人だけ、『一緒にドリブルの練習しようよ』と声を掛けてくれた子がいた……ような気がする。








「お母さん、私のとなりに写ってるこの子って」

「んー?あぁ、律くんじゃない!懐かしいわねぇ!お父さんも監督さんも、みんなこの子には一目置いてたのよ。それにね?」