その2


「この辺りなんですか?」

「まず、間違いないと思います」

「どうします。今、掘ってみますか?スコップは無理にしても、菜園用のシャベルなら、目だたないでやれますよ」

「今はやめときましょう。中途半端では意味ないので」

「わかりました。でも…、手紙を入れたカプセルは鬼島が人間の時に埋めたものでしょうから、そう深いところではないということになりますよね?」

「おっしゃる通りです。丸島さんの残された記録と、他に鬼島がオリジナルで手紙を送りつけた人が最低一人はいる訳ですから、私の推測だと、ここへ一緒に眠っていると思います」

「”ほか”はもっといるでしょうか?」

「たぶん、丸島さん以外は一人でしょう」

「その理由は思い当たるのですか?」

ここで二人は同時に立ち上がった。
そして国上は改めて、当該地面に目線をおとしたあと、和田に顔を向け、答えるのだった。


***


「理由というか、私の推測の根拠としているのは、丸島さんの呼び寄せ夢です」

「えー!じゃあ、丸島があの夢のなかで鬼島にカプセルを開けさせられ、過去2年分の手紙2通を読まされたのは…」

「ええ。あの夢の中で丸島さんが開けたカプセル二つは、手紙2枚ではなく、オリジナルの呪い相手二人という解釈です」

「!!!」

まさに、和田は仰け反る思いだった。

そしてその胸中は、”そうだったのか”であっただろう。
更に、”そうであるなら…”と”次”が即、脳裏に振りたったに違いない。
他ならぬ、丸島の”遺物”をこれ以上なく、精査を繰り返してきたのが、この和田なのだから…。


***


「おお、さすが和田さん。”次”はもうお察しのようですね?」

「国上さん!あのカプセルの中は、最初から白紙の便箋それぞれ1枚なんにすね?それを、呼び寄せ夢に引っ張りこまれた人間は、自分い届いた開けずの手紙の”中身”を意識の中で読まされる…。一時念じ手の鬼島によってストックされた波動によって…」

「おおむねビンゴです。まあ、それも現時点では私の推論の域になりますが」

”ふう…。なんだか、鬼島の動機やら呪いに対する情念のルーツが掴めただけに、ヤツの仕掛けがだんだん立体的に見えてくるようだ…”

和田は全身がジーンと痺れるような、一種の興奮を感じていた。