その4


「もしもし…、手嶋か?」

『はい。…先生、今三浦から連絡があって、夕方うたた寝をしてる間、例の夢を見たそうです。彼女、動揺してます。オレ…、これから会いに行ってこようかと思っていますが、なんて言葉をかけてやればいいか…』

”やはりか!”

和田の予感は的中してしまった。

「わかった。ちょっと待ってくれ…」

和田はスマホを保留にして、その場の3人に一報を伝えた。


***


「…皆さん、三浦美咲が今日の夕方、うたた寝で2回目の夢を見たそうです。それで、手嶋が彼女に会うと言ってますが…」

「和田さん…、手紙を読まされてないかどうかは確認したい。できれば、私が三浦さんから直にお話を伺えるようお願いできますか?」

国上は単刀直入に言った。

「では、手嶋が彼女の家から、国上さんのケータイにでいいですか?」

「ええ、それでお願いします」

和田は再びスマホを耳に当てた。
そして、手嶋に”その旨”を端的に伝えた…。


***


「ふう…、予想よりちょっと早かったですね。まあ、呼び寄せ夢ってことはないと思うが…」

鷹山は眉間にしわを寄せていた。

「彼女の”ペース”、どうなんですか…、柳の木の施術は間に合いますか?」

こう国上に問うたのは奈緒子だった。

「ギリギリかもしれませんね。何とか、彼女の直接誘導はくびれ柳を済ませてから行いたいが…」

さすがに国上も切迫した表情は隠せなかった…。
そしてその後、15分ほどして、和田と奈緒子はアライブを後にした。


***


「今日は遅くまで、本当にありがとう。奈緒子さん…」

帰りの車中、和田の口調はどこか仰々しかった。
対して、それを意識してか、奈緒子はやや早口でさらりと返した。

「いいえ。和田さんもご苦労様でした」

「ふー、しかし、今日は凄い1日だった。何か、前進したというよりも、新しいステージに立ったと言う感じがするよ。一気に…」

「そうですね。でも、まだ今日は終わってませんよ、和田さん」

「うむ、そうだった。もうそろそろ、国上さんには連絡が入るだろう。その結果は即、こっちにもらえるし、奈緒子さんと別れる前に結果はわかるでしょう」

「ええ…」

正面を向きながら、二人の口調はやや重かった。
雨は既に上がっていた。