呪いマニアの正体⑩


「鬼島さん!それは本当ですか?」

和田は鬼島の母からの言葉に驚きを隠せなかった。
無論、隣の野坂奈緒子も…。

「ええ…。則人の遺書には、自分が死ぬ間際に送った手紙のことで聞きに来た人には、渡してもらいたいものがあると書かれていましたから…。あなた方にお渡しすべきかと…」

「奈緒子さん!」

「ええ、和田さん、お預かりしましょう!」

「うむ…。では、鬼島さん、則人さんがそう託されたのなら、私共もその当該人物という認識ですし、実はそれに近い目的でお伺いしたわけですので、”その書き物”はお預かりさせていただけらばと思います」

「はい。では、和室のタンスにしまってありますので、今持ってきますね。まあ、封をした薄っぺらい封筒1枚ですけど…」

こう言いながら、鬼島の母親はゆっくりと腰を上げ、和室まで歩いて行った。


***


「和田さん、手紙ですかね…?」

「うーん、要は封筒なんだろうけど、中に入っているのは何なのか…」

二人が小声でそうやり取りをしていると、ほどなく、母親が戻ってきた。

「こちらです。どうぞ…」

「ありがとうございます…」

和田は、鬼島の母親から定型サイズの白い封筒1通を受け取った。

”これは…!!”

手にした途端に目に入った、封筒の表に手がきで書かれた”宛て名”に、和田は驚愕した…。


***


「和田さん…!」

和田は、その宛名が見えるように隣に立っていた奈緒子に封筒をかざすと、彼女も思わず目を見開き、驚きを隠せない表情だった。

その宛名は縦書きの漢字4文字であった。

”挑戦者様”…。