その1



「あのう…、お聞きしずらいことではあるんですが、丸島さんとはええと、互いに感情的にはどうだったんでしょうエッチ&エロ表現先にありきのかね。先ほども、あなたは丸島とは高校時代も親しい間柄ではないとおっしゃってはいましたが…」

「ぶっちゃけ、俺の方は気が好かないヤツというところでした。ああ、娘さんを前にして失礼ですよね。ただ、正直に答えないといけないでしょうから…(苦笑)」

”思わずここでは私、クスッと笑いをこぼしちゃったわ”


***


「丸島の方はどうだったでしょうか?例えば、憎いとかの感情レベルを持ってたとか」

「うーん、なにしろ付き合いがなく、去年のあの時に何十年ぶりで会ったってことだし、その辺はどうかな…。ただ、その居酒屋での席では、彼には不快感を与えるようなことを言いました。定年後の夢とか教え子の自慢ばっかしてんじゃねーよって…。今は反省してます。この年で借金まみれな自営業者の逆恨みでした。だから、あの時は頭にきてたかな」

「逆恨みですか…」

”この時の和田さんの表情…何とも複雑そうだったわ。父は教師として不適切な対応はあったにせよ、逆恨みという名目のもと、あんな理不尽で辛苦に満ちた死に方を迫られたわ。それを一番に痛感しているのが和田さんなんだもん…”

「水野さん、父はあの手紙をあなたに送ったことは後悔もしてました。だけど、それは正しい選択のはずだという確認もあってのことなんです。父をどうか許してやって下さい」

「奈緒子さん…、こっちこそです。彼の墓前に行った折りにでも、居酒屋での妬みは逆恨みだったと後悔してた…。そう謝っていたとお父さんに伝えて下さい」

「水野さん…!」

”私はここで泣いちゃったわ。この水野さんもお父さんの、過度な自己意識に嫌悪感を抱いていた。私のように…。でも、私同様、この水野さんも最後は、お父さんを理解してくれたことが嬉しかった…”