その5


和田と奈緒子はおよそ1時間半、水野から”話”を聞くことができた。
それは彼らにとって、予想以上に有意義なものではあった。

だが、その結果として、次のアクションにかかるには、一時の猶予も待てないという危機感が募った。
その次のアクションとは…、言うまでもなく、故鬼島則人の家に出向いて、彼の過去、生い立ちを含めた、”開けずの手紙”に至るまでの動機らしきものを是非とも掴む必要性を感じたのだ。

そんな思いに従って、二人はその足で、東京都下の一角にある、鬼島則人の家に直行したのだった。


***


鬼島家へ移動する車中、奈緒子は先ほどの3人でのやり取りを、再度頭の中でかみ砕いていた…。

”やっぱりなのね!水野さんの受け取った手紙には血のりらしき赤い血がついていたのよ!父が残した遺品類には、彼に発送する封筒に自分で赤いシミをつけていないことを私達に残したわ。ということは、鬼島の念じでということになる…”

「じゃあ、水野さんに届いた丸島発の手紙には、赤いシミが封閉じ部についていたことは、間違いないと…」

「ええ。わずかの間でしたが、この目でしっかりと確かに…。間違いありませんよ。もっとも、赤かったが血だとは思いませんでいたけど…」

”このやり取りで、少なくとも、三浦美咲という子の受け取った手紙についていたシミは、鬼島によってということはほぼ確実になったわ。ならば、2次症例にも彼の直接念じが及んでるってことになるの…?”

ここの観点は、アライブの鷹山と国上双方が特に注目しているところだった。
鬼島のオリジナルな念じ込みがどこまで及んで、どんな規則性を持っているかどうかで、2次以降の一連の呪いの限界値を推し測ることができるのだから…。