その1


「ここみたいですね、和田先生…」

「ああ、すぐ行こう」

手嶋は高校時代の恩師である和田を伴って、その夜、三浦美咲の自宅を訪ねた。

「…先生ー!お待ちしてました、どうぞ!」

美咲はドアチャイムが鳴ると数秒で玄関から飛び出て、思わず手嶋をひっぱり込むように家の中に引きいれた。

「三浦…、こちら、オレの高校時代の先生で和田さんだ。例の手紙の件、大変詳しいので、お連れした。かまわないか?」

「はい!和田先生…、三浦です。よろしくお願いします!」

美咲は何しろ、慌てていた。
”例の手紙”については、あの後、自分でもネットで調べてみたが、かなり”ヤバイ”ものだという認識は概ね知り得ていたのだ。

しかも、危険が迫るまでの時間がないという点で、すでにワラをもすがる心境だった…。


***


美咲は手嶋の申し出どおり、両親の同席を段取っていた。
従って、1階の畳間には、5人が向かいあってとなった。

「これが、その手紙です…」

美咲は早速”それ”を手嶋に差し出すと、受け取った手嶋はすぐに左隣の和田へ渡した。

和田は手早く封筒の両面に目を通すと、先ず一言、美咲に向かって身を乗り出しながら確認した。

「美咲さん…、初めに確認するが、この手紙、一度も開けてないね?」

「はい。そのままです。不気味でとても中身を見る気にはなりませんでしたから…」

「ふう…、よかった…」

和田は大きく息をつき、隣に掛けている手嶋と一旦顔を見合わせていた。

「美咲さん…、それにお父さん、お母さん、これはよく聞いてください。常識では信じられないことですが、実際、これと同様の手紙を受けとって、私の教師仲間が自殺しました。昨年…」

「!!!」

このいきなりの和田発言で、もう三浦家3人は完全に絶句状態で固まった…。