その1


「…なるほど!そう言う切り口なら、学校側も耳を傾けてくれますね…。さすがに中高生がごく限られた狭い範囲内での連鎖自殺がこうまでとなれば、もう社会問題のレベルですから…」

「そうです。当校もその危機意識は先生方全員、強く持っています。加えて、手嶋先生の前任校で立て続けに同級生の女子生徒が自殺したということは、皆強いショックを受けています。ですから、このタイミングなら、学校側を畳み込めます」

「ふう…、しかし野坂先生はすごいなあ…。教育現場への情熱もそうだが、発想とかも…。自分も色々見習わないとなあ…」

手嶋は首を左右に振りながら、盛んに感心したといった表情で奈緒子を見つめている。


***


「さっそく、日の職員会議で私が切りだします。そこでは、先日のお通夜で居合わせた女子生徒の同級生から、手嶋先生が相談を持ちかけられたことを話します。発言を求められたら、手紙の件とかは伏せて、さらっと流して下さい。やはり、呪いの手紙とか、そこら辺を出したら先方に断る理由を与えるようなものですから…」

「わかりました。その後は、どう持って行くんです?」

「何しろこうも自殺が頻発する状況下では、いつ本校もそういった事態に直面しても不思議はないんですから、そこを強く訴えます。とにかく、そうなる前に、自殺を考えて悩んでいるような生徒が、我々学校側に相談できる仕組みを大至急整えることが必要だと…」

「うーん、そう言う提議なら、教頭も耳を傾けない訳にはいきませんよね。当然、他の先生方も…」

「はい。なので…」

奈緒子と手嶋のヒソヒソ話は朝から熱を帯びていた…。