強い呪い



「鷹山さん!なら、この手紙、開けなくても呪いはかけられる。そういう結論ですか!」

和田は敢えて挑発気味に迫ってみた。
ほんの15分にも満たないやりとりで、超常現象・怪奇現象・霊現象を長年追及してきたこの鷹山からは、どこかよりどころが感じ取れたからだ。

”彼は今の時点でも、きっと突破口になる切り口を頭に描いている‥”

だが、この後の鷹山からの返答は、どの程度彼の期待にそぐっていたのか…、かなり微妙なところであった。

「これも完全に個人的推測です。”開かずの手紙”を用いたからには、”開封しなければ呪いはかけられない”を遵守する気だったんじゃないですかね。あくまで。ただし、焼いてもそれは開封になるとか、事実上、呪いのタネは永久に消滅させないってそこで終わりにするつもりだったのかどうかで、我々の対応は違ってきます」

「…」

ここまででは、和田には鷹山の言わんとするところが汲み取れなかった。

「…今の段階で自分が思うには、鬼島氏はそこで満足はしなかったはずだと…。要は丸島さんにその手紙を開けさせる、若しくは、開けたと同様の状況にさせる手立てを施してきたような感じがするんです。それならばですよ、そこの状況に丸島さんを持っていかせないで、その上で焼却以外の呪いを消滅させる方法を見つけていくべきでしょう…」

「では、具体的にこっちは何をして、そちらはどう動いていただけるのでしょうか?」

ここで和田は単刀直入な問いかけに出た。


***


「ええ、そうですね。まずもっては、丸島さんの手元にある”現物”を早急にお預かりしたい。今日中にでも。…今、私の頭の中では、あの手紙が丸島さん本人以外、家族やあなたを含めた親しい友人にまで災厄がおよばないかということも、決して拭えない懸念なんですよ。ですから、まずは…」

「わかりました。この場で連絡取って、今日、このまま彼の家に行ってお渡しできる段取りにしますよ。それで、その後は…」

「然るべき霊能者の方を当たります。やはり、かなり難度の高い処置が求められる事案に思えるので、この事例に最も適した霊能者でないと”解決”には至らないでしょうから。ここは慎重に、厳選します。その間は毎日連絡をいただきたい。何か変わった現象が起これば即、それに対処をしていく必要がありますので」

「承知しました。じゃあ、さっそく丸島に電話します。それで、オレから下話したら、一度、直に話してもらってもいいですか?」

「ええ、構いません」

和田はすぐに手元のスマホから丸島のケータイに発信した。


***


「おお、丸島。今、朝話したアライブの鷹山さんのところだ。概ね話を済ませたよ。それで、やはり鬼島は”開けず手紙”の手法でお前に逆恨みを実行ってことで、ほぼらしい。…鷹山さんはオレの予測通り、この呪いはかなり強力だと見てる。そこで、先日届いた現物を至急精査してみたいそうだ。今日、これから二人でそっちに行ってブツを預かりたいんだが、いいか?」

「ああ、構わん。今日は家にいるから」

「よし。なら、ちょっと、鷹山さんと代わるぞ」

「わかった」

『…初めまして。アライブの鷹山です』

「ああ、丸島です。この度はお世話になります。今、和田からは聞きました。これからであれば、用意してお待ちしていますので」

『はい。たぶん、1時間かからずに伺えるかと思いますので、よろしくお願いします。それで、その際は、ご家族の方には余分なご不安を与えたくないので、私はお宅には顔を出さないほうがよろしいかと思います。和田さんを介した受け渡しにさせてもらえばと…』

「ええ、それでは、家の近くまで私が外に出ましょう。やはり鷹山さんとは面識を持っておきたいので。手紙をお渡ししたら、和田には家に寄ってもらって、家族と会わせたいと思ってますから、そのまま…」

『わかりました。では、後程。今、和田さんに代わります』

話は3分程度で済んだ。
その10分後、和田と鷹山は事務所を出て、都内某所の丸島宅へと向かった。