その1


その朝、和田が三浦美咲の家に着いたのは、9時15分過ぎだった。

和田は美咲の両親に挨拶を済ませ、奈緒子とも最低限のやり取りをすると、彼女は三浦家を後にしたのだが…。
その際、美咲の母親が自らの運転で自宅まで送って行くと言って聞かず、奈緒子は母親の言葉に甘えることとした。

美咲は涙を流して、奈緒子の乗った車を視界から消えるまで、手を振り続けていた…。


***


「えー?じゃあ、あの高校の校庭に植わっていたくびれ柳の実物、やはり倒れていたんですか…!」

「ええ。私が帰がけりに見てこようと思ったんですが、鷹山さんの方で先ほど足を伸ばしてくれて…。今、我々二人のケータイには画像が送られてくるはずですが、柳のてっぺんは地面にめり込んでいたそうです。要は、美咲さんが呼び寄せ夢で見たままってことです。おそらく時間的にも…」

そうこうしている間に、和田と国上のスマホには、鷹山からの画像データが送られていきた。

「参ったな。こりゃ、丸嶋の夢にも出た図柄ですよ。なんてこった。しかし、これで鬼島の負のエネルギーは用を成さなくなったと見ていいんですな?」

「ええ、奈緒子さんにも言ったが、少なくともこれからの開けずの手紙は、こと、くびれ柳を媒体にした呪い掛けはもうない、できないと見ていいでしょう」

「あくまで、くびれ柳でってことか…。なら、この後、アライブに百夜殺しの呪いがかけられたとかの投稿があれば、他の媒体で鬼島の呪いは根絶できていないってことになるのか…」

和田は日田にしわを寄せ、俯いてしまった。


***


「和田さん!まずは鬼島の呪いを発動するメインの発信基地たる、くびれ柳の地を駆逐したんです。これは、あなたと奈緒子さんが鬼島の母親とああいった接触に漕ぎ着けてくれたおかげなんだ。丸嶋さんが命を投げだしてこの世に残した願いを、他でもないあなた方二人が叶えたことにもなるんです。これで良しとしていいんじゃないですか?」

「国上さん…」

和田は唇を噛みしめていた…。