開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】

その6


”やだよー!開けたくないよー!!”

柳の木の下で、鬼島の導きに従わざるを得ない”その美咲”は、まさに、大泣き状態でカプセルを開けようとしていた。

嫌で嫌で仕方ないのに、両手は自分の意思にはものの見事に背いて確実に導かれて行く。
それは百夜殺しの呪い発効に向かって、着々と手繰り寄せられることを意味していた。

”美咲ちゃん!いい?あの中に入ってる紙を読めといわれても、絶対読んじゃダメ!破り捨てるのよ、あなたが。あなたがやるの!柳に下にいる美咲ちゃんはあなたの映し鏡よ。国上さんやご両親も力を送ってくれてるの。私がみんなを代表して、あなたのそばに来てる。一緒にやるのよ、美咲ちゃん!!”

それははっきりとだった。
意識の中の美咲は、すでにその瞬時をこの空間と本当の自分の居場所を絶え間なく往復していた。
その時はすでに。

そうであった…、もう彼女の感覚では、自分には野坂奈緒子がピッタリ付き添ってくれている確信を得ていたのだ。


***


”でも、思いよ。口が…、手が…。アイツに指示される動作以外は重くて自分の体が動かせないんだよー”

その美咲の”絶叫”も、本来はその空間にいない奈緒子にもしっかり到達していた。

”美咲ちゃん、よく聞くのよ。あなたの心は、意識はもうその重しがアイツから解放されてるの。もう、私達と一緒に行動できるのよ。あとは、柳の下の自分をそのあなたが引っ張ってくればいい。できるわね?”

力強かった。
何しろここに至っての奈緒子の気持ちと言葉は、この空間に呼び寄せられた美咲にとって、後光とも言えた。

”やってみる!私をアイツとくびれた柳の大木から奪ってくる!”

美咲のこの決意も力強かった。


***


一方、東京某所の国上の作業堂では、鷹山が鬼島の負気が充満した密閉ケースの中をまさに食入るように終始していたのだが…。

”メリメリメリ…”

「あっ、とうとうカプセルにひびが…」

すかさず鷹山はスカイプの画面越しに国上へ報告した。

「鷹山さん、こっちも臨界点を迎えそうだ。濃塩水はケース内に好き間無く流入してくれ。もし、破裂するようだったら、作業堂から出て部屋ごと密閉を!」

「ええ、承知してます。こっちは大丈夫だからと、奈緒子さんにも伝えてください…」

「うむ…」

国上は鷹山の言葉そのままを奈緒子に告げると、さらにトーンを上げて念じ唱えを続行した。