その5


その週の火曜日…。
夜の8時過ぎには、準備一式を整えた国上が三浦美咲の家を訪れていた。

奈緒子と手嶋も7時には到着していた。

「…ということで、お父さんお母さん、美咲さんには今夜、このまま起きててもらって、睡魔に襲われ眠りにつきそうなタイミングで私が言葉をかけ、浅い眠りの状態を誘引します。呼び寄せ夢が現れるまで、睡眠を中断してさらに繰り返します。非常につらい作業にはなりますが、私も全力を注ぎますので、どうかご理解をお願いします」

「私たちは、国上先生にすべてお任せ致しますので、どうぞよろしくお願いいたします」

「美咲…、辛いでしょうが、頑張るのよ…。先生、どうかこの子を救ってやってください…」

父親に続いた美咲の母は、もう涙声になっていた。

「大丈夫だよ、お母さん。私は絶対、夢の中で手紙を読まされるような目には遭わない。頑張るから、二人とも安心してて」

美咲は至って気丈な口ぶりで、母にそう答えた。


***


「じゃあ、三浦、頑張ってな。…野坂先生、本当にご苦労様ですが…」

「手嶋先生、後はお任せください。明日は昼過ぎに和田先生と交代で学校へ参ります」

「この子を、よろしくお願いいたします…!」

手嶋は奈緒子に深く一礼した。
その後美咲の方とポンと叩くと、それに対し美咲は満面の笑みを返した。

そして手嶋と両親が部屋を出た後、国上は美咲に電流を放電させるためのヘッドギアを装着した。

「美咲さん、頭、きつくないかな?」

「大丈夫です。でも、電気って、やっぱり痺れるんですかね?」

この時点での美咲は、呼び寄せ夢の恐怖よりも、やはり電流を流されるという、現実的な当面のコトの方が心配になっているようだった。

”さあ、始まるのね…。美咲ちゃん、頑張って…”

クッションソファにかけて、ヘッドギア姿になった美咲のあどけない表情を痛いげに感じながらも、奈緒子は心の中でそう力づけていた…。