その1


その夜、国上は自宅の離れにある作業堂の中で、今しがたくびれ柳の根元から掘り起こして持帰ったカプセル二つを、密閉ケースに納めた。
中の手紙らしき紙片はそのまま収納された状態で…。

更にケース内には、故丸島友也に届いた鬼島からの開けずの手紙と、アライブの元に提供されて所蔵していた、2次年念じ者が郵送した開けずの手紙、合計2通の開封済封筒を添えた原本も投入された。

”ナムソカナンザラ、ハマラニハラマ…”

国上は、それらを前に、気の混合蒸溜祈祷を念じ始めるのだった…。


***


”パカッ!…パカッ!”

「これは…」

約20分ほどして、ガラス製の密閉ケース内で、変化が起こった。
何と、カプセル内に入っていた紙片が燃え出し、黄色い煙を上げると、その二つは立て続けに勢いよく中を空けたのだ。

「やはり、カプセルの中の紙が呪いの波動媒体だったんだ。くびれ柳の発する負気と共振反応して、呪われ手にエネルギー発動していたのだろう…。ケース内に入れた開けずの手紙の気とぶつかり合って、エネルギーが発散したか…、やはり…」

”ナムソカナンザラ、ハマラニハラマ…”

国上は念じ祈祷を続けた…。


***


翌日、国上は鷹山と共に三浦美咲の家を尋ねた。
美咲に呼び寄せ夢が訪れた際の施術を、家族にも事前に説明することと、本人から直近の様子を聴取して、現状を可能な限り正確に把握する目的で、その場には手島と和田も立ち会った。

美咲はここに至って、落ち着いていた。
腹が据わったと言えたかもしれない。

いずれにしても彼女は、国上らの方針に全幅の信頼を置き、身を任せる決心をしていたのだ。

国上はその場で施術決行日程を概ねよく週半ばと定め、美咲と家族からの同意を得るととなった…。

”いよいよだ…。なんとか、三浦美咲から呪いの手紙を起ち切れると良いが…”

和田は国上と真剣な面持ちで打合せ中の美咲を見つめ、心の中でそう呟いていた…。