2月10日。

バレンタイン4日前。

私、石崎愛夢はスーパーのお菓子売り場の前でスマホに表示しているレシピとチョコレートの棚を交互に睨んでいた。

お菓子作りなんてしたことすらない。

そんな私がお菓子を作ろうとしているのには理由がある。

──あれは、高校2年生の春。

桜が満開だった桜並木を、友達の木村優花(キムラ ユウカ)とルンルンで歩いて学校に行った日。

クラス表を確認して教室に向かい、席に座ろうとしたときだった。