スウィートメモリー💝

階段をかけ下りて,靴を履き。

私はまた走った。

体力が無さすぎて息は荒れ,膝とついでに足首も吊っていたい。

もうやだ,私,運動音痴なのに……

皆が驚いて振り返ってくる。

恥ずかしい,いやだ。

でも,まだ止まれない。

人生で最初で最後の,私の勇気なの。

どこ行っちゃったの,亜季。

約束って,小指を向けてくれたのに。

走り抜けようとした校門で,思いがけず足止めを喰らう。

その集団はほとんど女子で出来ていて,男子は迷惑そうに大回りをしていた。

なんなのこんな時に……

上手く行かないことばかりで,じわりと目に涙が滲む。

鼻を啜って私も大回りをしようと動くと,チラリと誰かの後頭部が見えた。

え……? あれって……

中心にいるのが,男子だと分かる。

囲う女子の手に,チョコがあることも。

あれは,もしかしなくとも。

この騒音の中から,女の子の声を一人一人聞き取らなくても。

真ん中で困ったように,脱出したそうにうろちょろ動いているのは,亜季だ。

帰ろうとして,呼び止められたのか。

それとも,もしかして。

少しでも目立たないように,私を,外で待っててくれた……?