2週間前の私は,まだ誰にあげて誰にあげないか,決めきれていなかった。
だから,友チョコくらいなら亜季も受け取ってくれるかなと悩んでいた私は,その言葉にとても驚いたんだ。
亜季,食べる?
どれくらい軽めで聞こうかな,なんて。
取り繕うように顔をあげた私。
先手を取るように,亜季は口を開いた。
『俺,愛來さんのチョコ,欲しい』
『うん,いいよ』
あまりに普通の,柔らかい口調で言われて。
どっち?! と私は混乱を極めた。
単純に,チョコが欲しいのか。
なんなのか。
トドメを指すように,亜季が言う。
『クラスの女子に,受け取ってって言われたけど。誰からも貰わない。でも,愛來からは欲しいから。手作りとか言わないから,俺にちょうだい』
『……うん』
もしかしてって可能性に初めて気がついて。
そんなことを言われたら,期待しないなんてもう無理なんだ。
無言で促され,エアーで結んだ小指が,私には少し熱かった。



