高い音の目覚ましがなる。



「んぅ……」



ピチチと高いその音に,私は顔を歪めた。

もぞもぞと動いて,音源の頭をぱちんと叩くと,ピッと音を立てて音は止まる。

もう一度,あと,5分だけ……

そこで私はパチリと目を開けた。

あることを思い出して,しゅっと上半身を起こす。

今日は,今日は。

私は勢い良く壁掛けの小さなカレンダーを見た。

今日の日付に,小さなハートのマーク。

特別である,小さな証。

……急がなきゃ!

もっかもかのパジャマを脱ぎ捨て,私は急いで制服に着替える。

そして,バタバタと我が家の階段を駆け下りた。


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「姉ちゃんさー。なんかいつもより気合い入ってね?? 髪型毎日違うのは知ってっけど」



パタパタと洗面所から出てきた私に,1つ下の弟は声をかけた。

その一声に,ドックンと心臓が鳴る。

そんなことばかり気付かなくていいの!

そんなんだから……

そんなんだから……

モテるんだよ!!

八つ当たりの悪口は,どうも思い付かない。



「それよりこれ,食っていい?」

「……っだめ!!」