キミと世界が青めくとき 【完】



確かに、考えてる事が顔に出て丸わかりといってもその人の考えている事が細かくわかるわけではないし、わかったとしてもそれは考えている全てではないし、思っている全てではない。

わたしだってさっき色々と考えていたけれど、先輩はべつにわたしの考えていた事を一言一句全てを言い当てたわけではない。



「だからキミも、わかりやすいってのをラッキーだと思ったらいいんじゃない?」

「ラッキー⋯」

「例えば店でケーキとアイスどっちを食べるか迷ってるとしよう。キミは迷いに迷ってケーキを選んだ。だけどキミが迷っているとその顔で気付いた俺はアイスを注文する。そしてキミのケーキと俺のアイスを半分ずつ交換する。ラッキーじゃない?」

「ふふっ、何ですかその例えは」

「二つ食べられるんだからキミはそのままでいいじゃん」

「先輩って本当に凄いですね」

「何かその言い方馬鹿にしてない?」

「してないです。本当に凄いですよ」



わたしには先輩の様な考えは出てこないし、ラッキーなんて言葉絶対に使えない。

だけど先輩なら、ラッキーな例え話がすぐに出てきて、そうかも⋯と納得させるだけの力を持っている。


ポジティブというかなんと言うか、本当に凄いと思う。



「──────それに、」




「澄は“なんか”じゃないよ。俺が友達になりたいって思ったのは、澄だから。だから前にも言ったけど、そういう言い方するのは止めた方がいい」

「⋯⋯先輩、」

「自分の価値を自分で下げる事に何の意味もないから」




時折、知春先輩はこうして笑顔を消す。

だけどこういう時の言葉はわたしの心に深く深く刺さるんだ。


わたし“なんか”と思っているわたしと、わたし“だから”と思ってくれている先輩。


どこまでも卑屈で自信のない自分が嫌になるほど先輩の言葉は真っ直ぐで、わたしが一番欲しい言葉をくれる。


凛じゃなく、わたしを。

他の誰でもなく、わたしを。


見つけて、見つめてくれる先輩に不覚にも泣きそうになった。




「⋯わたし、先輩と友達になれてよかったです」

「うん、俺も」



電車の中で泣き出してしまいそうになるのを必死で堪えるわたしに気付いてか先輩は徐に視線を窓の外に向ける。

だからわたしはその隙に目尻の涙を急いで拭ったんだ。