キミと世界が青めくとき 【完】


「澄、信号変わりそうだから急ぐぞ」

「お姉ちゃん早くー!」


横断歩道の向こう側では、青色の信号が点滅している。

点滅している時は渡るべきではないよって思うのに、広大がわたしの腕を掴んで駆け出したからわたしはそんな真面目なこと言えなかった。

掴まれた右腕が熱い。先に横断歩道を渡った凛が急かす姿を見ながら、わたしを広大は待っていてくれたのかなって淡い期待をした。


渡り終わった後すぐに離された手。


「澄はホントどんくせぇ」

「ちょっと広大!お姉ちゃんに意地悪言わないでよ」

「ホントの事だろ」


広大がわたしを気にしてくれたのなんて本当に一瞬ですぐに凛と肩を並べて歩き出してしまう。それが少し寂しかったけどこんな事はもう慣れっこだから大丈夫。


「お姉ちゃんも、あんまりボーッとしてると置いてっちゃうからね!?」

「うん、ごめんごめん」

「本ばっか読んでるからボーッとしちゃうんだよ」

「それ関係ある?」

「あるでしょ!⋯たぶん」

「たぶんって⋯」

「まあまあ何でもいいじゃん!」


凛の高い声は時に耳障りで、だけどやっぱり、怖くても嫌いでもそうなりきれないのは、わたし達が双子だから。


「早くいこーぜ」


そう言った広大に笑顔で頷く凛になら、広大を取られても仕方ないって思う。

そもそも広大はわたしのものなんかではないけれど、もしも凛が広大を好きなんだと打ち明けてくれたらわたしは潔く身を引く。

それは凛に対する絶対的な劣等感と憎みきれない愛情があるから。



凛にらなら─────って。