キミと世界が青めくとき 【完】



それから一週間が経つのはあっという間で、すぐに先輩と海に行く約束をした日になった。

メールが苦手と言っていた先輩はメッセージアプリでは普段話しているよりも気持ち素っ気ない気がしたけれど、苦手ということを前もって聞いていたおかげで変に落ち込む事はなかった。




「お姉ちゃんが図書館以外に出かけるなんて珍しいね」

「⋯うん」

「しかも海でしょ?⋯ありえない」



部屋で準備をしているわたしに凛は昨日からずっと同じ事を繰り返す。

だけどそれも無理はないと思う。

友達もいなくて、出かけるといえば図書館だったわたしがまさか人と海に行くなんて。

自分でも半ば信じられないのだから、傍から見ればもっと信じられない事なのだろう。



「ねぇ、誰と行くの?」

「知り合いの人」

「どんな関係なの?まさか彼氏とか?」

「違うよ。普通に、友達⋯っていうか先輩っていうか⋯」

「先輩!?うちの学校の?」



しまった、と思った。

先輩にも凛の存在を知って欲しくないけど凛にも先輩の存在を知って欲しくない。

だって、凛は昔から何でもわたしの物を欲しがった。

おもちゃもお菓子も、わたしの物を欲しがったんだ。

本当は赤色が好きなのに、わたしが青色を好きだとわかっているからわざと青色の物を選ぶ。


そういう子なんだ、凛は。


だからと言って凛がわたしを嫌っているとか、意地の悪い子だとかは思わないし思いたくない。


だけど凛はきっと、わたしの事を見下してはいる。

自覚してるしていないに関わらず、自分の方が上だと思っている。


それは仕方の無いことだと思う。


わたしだって凛の方が友達も多いし、人付き合いも上手くて、いつも笑っているし、きっと人は皆、凛を選ぶんだろうという事は嫌という程わかっている。


だけど、だからこそ、わたしが見つけて、わたしという人間を見てくれる先輩は絶対に取られたくないと思ったんだ。


この感情は独占欲で。


先輩は物じゃないし、ましてやわたしのって事あるはずないのに、独占欲を感じてしまっている自分が恥ずかしい。恥ずかしいけど、先輩を取られたくない。




「約束の時間があるからわたしもう行くね」

「あっ、⋯うん」



これ以上踏み込ませないようにそう言って立ち上がって部屋を出た。