キミと世界が青めくとき 【完】



「連絡は何度もしようとした。でもやっぱ、そういうのってちょっと勇気いるじゃん」

「勇気⋯」

「俺、普通に対面で話すのは全然平気なんだけど、メールとかのやり取りになると何か緊張しちゃうんだよ。自分の気持ちが文字に残るって、変に緊張して」

「だから、連絡くれなかったんですか?」

「澄がどれくらい本気で受け取ってたのかはわからなかったし。後は単純に七月いっぱいは友達と遊びまくってたってのもあるけど⋯」

「⋯けど?」

「やっぱ一番は一歩踏み出せなかったってのが大きい」



そう言って居心地悪そうに後頭部に手を当てた先輩は「チョコ溶けちゃうよ」と食べかけのパフェを指さした。



「あっ、」

「まぁ、ゆっくり食べればいいよ」

「はい⋯」



慌ててパフェをスプーンに掬うわたしを見て小さく笑った先輩はその瞳を僅かに揺らした。



「──────海、行くか」

「⋯⋯っ」

「来週、暇?」

「いつでも暇です」

「はは、なら決まり。来週一緒に海行こう」

「⋯冗談じゃなくてですか?」

「冗談じゃないよ」



目を伏せて笑った先輩はなんだか妙に色っぽくて、店内はとても涼しいはずなのに一瞬、体が熱くなった気がした。



「詳しい事はまた連絡する」

「⋯無理はしないでください」

「べつに苦手ってだけで無理はしてないよ」

「ならいいですけど」



その後はわたしが読んだ枕草子の話をした。

先輩は「古典とか無理ー」と言っていたけど、一度もわたしの話を遮る事なく相槌を打ってくれていた。